ヴァージニア・ウルフの波 新訳版を読んでモダニズム文学を知りました。

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本とタイトル 波

2021年の6月に出版されたこの「波」は、45年ぶりの新訳なのだそうです。

私はこの新訳版が初めて読むウルフ作品だったので、技法もさることながら、こんな小説があるのかと驚きとともに

これが20世紀モダニズム文学なのだなと認識をした次第です。

†黑ミリ†

1931年に発表されたウルフの「波」は、ウルフ文学の到達点とも言われています。

作品の全体像としては、難解だという印象。初めて読むウルフ作品には向かないと私は感じました。しかし逆に考えると、代表作はどんな作品なのだろうと非常に興味がわきました。

ヴァージニア・ウルフの代表的な作品はこちらです。


目次

読んだ感想

沖縄の海
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とにかく文章が美しいです。物語に入る前の移ろいゆく波の描写が、風景画を見ているような気分にさせます。

文の芸術に圧倒しつつ、物語は独白形式で進んでゆきます。

登場人物は男女6人で最初のうち誰がどんなキャラクターなのかわからず混乱しましたが、読み進めるうちにわかってきて

自分と重ねてみたりしながら読みました。

この気持ち、わかるなぁと私が一番共感したのはロウダという女性です。

訳者あとがきにあるように、ロウダは現実世界では生き辛さを抱えている人物で、ウルフ本人の姿も投影されているそうです。

「ロウダ」とはギリシャ語で薔薇の意味っていうのもまたいいなと思いました。

そんなロウダの少女時代のひとコマに、私は深く共感しました。

だからわたしは、自分のほんとうの顔を見せつけてくる鏡が大嫌い。

ひとりぼっちで、わたしはよく虚無のなかへ落ちていく。

世界の縁から虚無に落下しないように、わたしはひそかに足を突き出さなくてはならない。

どこかしっかりした硬いドアを手でドンドン叩いて、自分を自分の身体に呼び戻さなくてはならないの。

波 新訳版 49ページより抜粋

登場人物それぞれの人間性が際立っていて、6人全員が主人公のように感じる点も魅力のひとつです。

誰か一人の人生を追うのではなく、ひとりひとりの濃厚な心の声を感じながら読むのが、この小説の醍醐味だと思います。

特に晩年にかけての老いていく人間たちの心の声は、自分も年齢的に近いため心に迫るものがありました。

印象的な言葉たち

この「波」という作品はとにかく描き方が斬新で、小説のようなポエムのような、凡人には表現できないのですが

ウルフ本人がプレイポエム(劇=詩)と呼んで書かれた作品です。

それ故に、とても素敵で印象に残る言葉たちが数多くあります。

中でも私が一番ぐっときた表現がありまして、男女のロマンチックな場面をこんなふうに素敵な言葉で綴るのねと、

心を震わせた部分を引用します。

ぐいっと、岩から剥がされる傘貝のように、わたしも引き剥がされる。彼とともに落下する。運び去られる。

わたしたち二人して、このゆるやかな上げ潮に身をゆだねる。

このためらいがちな音楽に、出ては、また入る。ダンスの流れを岩が堰き止めると、それは揺らぎ、ふるえる。

出ては入りしつつ、わたしたちはついにこの巨大な姿にのみ込まれていく。

それは二人をしっかり結び合わせる。わたしたちはそのしなやかな、ためらいがちな、性急な、完全にとり囲む壁から外に出られない。

わたしたちの、彼の固い身体とわたしのなびく身体とは、その身体のなかで強く抱き合わされる。

二人を一つに結い合わせる。そしてなめらかで、しなやかな襞のなかにのび広がりながら、そのなかにわたしたちを巻きこんでいく、いつまでもいつまでも。

波 新訳版 115ページより抜粋

この小説には色々な作品から引用された言葉も、たくさん出てきます。

有名なものだと、シェイクスピアの作品です。中でもとりわけ多かった作品が「ハムレット」でした。

†黑ミリ†

この機会に「ハムレット」を読んでみると、ウルフのエッセンスを知れたり、新たな発見があるかもしれません。

イギリス文学作品にはシェイクスピアの引用が多く見られます。特に有名な作品(四大悲劇と呼ばれています)を読んでおくと、その引用された物語の味わいも変わってくるので未読の方におすすめします。

シェイクスピアの四大悲劇を読んだ感想はこちらです

ヴァージニア・ウルフの新訳版は他にもあります。最近出版されたものは「灯台へ」新潮文庫です。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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本とタイトル 波

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この記事を書いた人

† 黒本 未莉 くろもとみり †


† 1982年 東京生まれ  


† 高校中退の元書店員、現在は夫と二人暮らし。
 
 本が好き。

 読書の魅力を、自分の言葉で伝えていきたい。

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