フェルディナント・フォン・シーラッハの作品を読んだ感想

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天秤と六法全書

ナチ党全国青少年最高指導者バルドゥール・フォン・シーラッハの孫で、刑事事件弁護士でもある著者の作品6冊をご紹介します。

†黑ミリ†

デビュー作から短篇集の三部作、エッセイ、長編小説とバラエティーに富んだラインナップです

目次

犯罪 罪悪 刑罰 読んだ感想

犯罪の感想

淡々とした語り口がなんとも心地よく、11篇の物語を一気に読み終えてしまった。人間の犯す罪には、序文にもあったように 「物事は込み入っている」 ものなのだと強く感じた。犯罪心理、世界の不条理について考えた。自分の今の気分に合っていた作品だったから読めて良かった。

罪悪の感想

こちらも語り口がシンプルで読みやすいが、唐突に終わるショート過ぎるストーリーもあって物足りなさを感じた。本作は罪悪を抱えた人間のドラマであるが、必ずしもその罪が贖われるわけではない。不条理極まりないけれども、人生とは大抵そのようなものだ。

刑罰の感想

前作の罪悪よりもこちらは読み応えがあった。三作品ともに問われる人間の異常性、罰を与えられずに埋もれてゆく事件・・・弁護士の視点で淡々と描かれる物語。著者が弁護士で、その体験を元にしたフィクションではあるが実際に起きていると思わせるリアリティーは流石だった。

「犯罪」は2012年本屋大賞の翻訳小説部門で第一位になった作品で、著者のデビュー作です。

第二短篇集の「罪悪」と第三短篇集の「刑罰」で三部作となっています。

記事の最初にも触れた通り、この作家のプロフィールには大変興味深いものがあります。序文ではさらにインパクトのある著者のエピソードが書かれていて、引き込まれました。

この弁護士である著者ならではの整然とした文章がとても読みやすく、物語のテーマは重くともサラリと読めてしまうのもこの作品の魅力です。

よくテレビでやっている海外の事件の再現ドラマを見ているような感覚で、私は読んでいました。海外文学をあまり読んでいない方でもすぐ読めると思うのでオススメです。

様々な事件の中でも、特に人間の異常性が如実に現れるような物語が印象に残りました。

カールの降誕祭を読んだ感想

この本は、気鋭の版画家であるタダジュン氏の版画が挿絵として入っている短篇集です。

80ページちょっとで3篇の作品が収録されていて、活字も大きめなので小説としては読みやすいのですが内容がかなりブラックになっています。

重たい、暗い話が好きな自分でさえ読み終わったあとは少しどんよりとしましたが、版画の雰囲気も作品世界に合っていてよかったです。

訳者あとがきも読み応えありました。

珈琲と煙草を読んだ感想 

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この本は著者の自伝的エッセイが多く収録されていて、その他に観察記録や小説もあります。

まさにタイトルの通りに珈琲と煙草で一服しながら読みたい作品です。

この作品を読んだことで、シーラッハの描く小説世界の輪郭のようなものがより鮮明になったと私は思いました。

個人的に気に入っているのが20番のところで、ミヒャエル・ハネケという映画監督についての話です。

その中で「隠された記憶」という映画にも触れていたので、この映画に興味がわきました。

その映画はこちら

コリーニ事件を読んだ感想

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すらすらと読める法廷劇ではあるけれども、登場人物たちの複雑に絡み合った事情が胸に刺さって苦しくなる。あとがきと解説を読んで、この小説は実際の政治にも影響を与えたことを知り、改めて作品のちからというものの凄さを感じた。最後の主人公の台詞とエピグラフが重く心にのしかかる。

まとめ

今回紹介した作品はどれもテーマはずっしり重いのですが、シーラッハの筆力でスーッと読めてしまう!

文体に無駄がなく、学のない自分でも難しい言葉につまずくことなくスラスラ読めたので(ここ、大事!)、普段海外文学を読まない人やこういったジャンルに苦手意識ある人にもオススメしたいです。

この他にもシーラッハ作品で読みたいのがあるので、紹介します。これも読んだら感想を書きたいと思います!

気になる作品はこちら

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†黑ミリ†

最後までお読みいただきありがとうございました。

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この記事を書いた人

† 黒本 未莉 くろもとみり †


† 1982年 東京生まれ  


† 高校中退の元書店員、現在は夫と二人暮らし。
 
 本が好き。

 読書の魅力を、自分の言葉で伝えていきたい。

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