トルコ初のノーベル文学賞作家オルハン・パムクの無垢の博物館を読んだ感想

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箱に入った小物

婚約者がいながら美しい少女との愛の逢瀬を重ねていく男の無垢なる恋の物語 読めばこの題名にも納得できる 異色の恋愛小説

ノーベル文学賞受賞後の第一作目であるパムクの無垢の博物館。オルハン・パムクは初めて読んだのですが、この小説を読んですぐファンになってしまいました。

†黑ミリ†

この他にも素晴らしい作品がたくさんあるので、全て読みたいと思える作家の一人になりました。

私はハードカバー本で読みましたが文庫本もあります

目次

上巻の感想

簡単なあらすじ

物語の舞台は、パムク自身が青春時代を過ごしたという70年代のイスタンブル。主人公は裕福な実業家でストーリーの最初からすでに結婚も決まっている、順風満帆な人生を送る30歳の男性です。ところがある日、遠い親戚の娘に再会してその美しく成長した18歳の娘の魅力に抗うことができずに、愛の逢瀬を重ねてゆく・・・。

私はトルコ文学を読むのは初めてですし、自分が生まれる前の70年代のイスタンブルについて何も知りません。それに主人公のキャラクターも人生に成功していて、何ひとつ共感できないまま読み始めました。

†黒ミリ†

若い女ににうつつを抜かす不倫の話かと思って、ますます共感できない・・・

小説を読む上で共感できることが全てではないと思いますが、私は共感しながら読んでいくと物語に没頭できるタイプなので最初は読むのが少し大変でした。

しかし逆にこの物語はこれからどんなふうに展開していくのだろう?と気になって、上巻を読み進めていきました。登場人物に共感できないながらもどこか引き込まれるストーリー展開に読む手は止まらなくなる。これがオルハン・パムクという作家のやり方なのか?と思いながら読んでいくうちに、ふとこれは村上春樹的な文学の匂いがするぞと感じました。

個人的な意見ですが、この作品は村上春樹が好きな人にはハマるんじゃないかなと思いました。

読みやすさでいうと、上下巻とも細かい章になっているのでその点は読みやすくて良かったです。一章ずつきちんとタイトルがつけられていて、その言葉にも素敵なものがあったりして印象的でした。男の回想で物語は始まって、徐々にタイトルの「無垢の博物館」の意味がわかってくる・・・。

そして下巻へ進みます。

下巻の感想

ここからは、ネタバレありなので嫌な方はスルーしてください。

下巻の最初の章に、幸福とはたんにその人間が愛する人の近くにいることだ というタイトルがつけられているのですが、この言葉に私は心を揺さぶられました。本当にそうだなと実感する出来事や場面に、自分の人生のなかで出くわすことは多くあると思います。愛する人に簡単に会えない状況は、誰しも経験していますよね。恋愛でなくても、追っかけているアイドルとかがいる人には共感できるはずです。

「物理的にそばに居る」ということの重大性、重要性だったり、幸福についての本質を考えさせられました。

見るということ というタイトルの章では、「見つめ合う」ことについて考えた結果、愛する人と見つめあい言葉を交わしさえできればどんなに幸せなことか、それが物理的にできなくなった時に実感するだろうということでした。

そして私が一番この作品で共感したことが、手に入れることができない愛する人の一部を自分のものにしたいという強い気持ち、その欲求です。

それは疑いようもない愛を捧げながらも「わがもの」とできない相手から、些細なものであれ、その人を形造る要素を手折り、自分のものにするという充足感だ。通例、「手折る」という言葉が暗示するのは、愛する相手の崇めるべき肉体の一部なのだろう。

無垢の博物館 下巻 176ページより抜粋

主人公の男ケマルは、愛する女性フュスンの吸った煙草の吸い殻や、その他彼女に関係するありとあらゆるものを蒐めるようになります。彼女自身を手に入れることは叶わないから、せめて彼女の一部をというように。

この感情は、オタク的な趣味を持つ人なら心に刺さると思います。

まとめ

そして「わがもの」にならない状況は、かつてあったものが失われた喪失感となります。

何もかもを失った男は、唯一「わがもの」にできた一部を残しておきたいと考え博物館を作ります。自分が無垢に愛した全ての瞬間を閉じ込めるために。

何かを盲目的に愛したことがある人なら、この男の結末に共感できると思います。

余談ですがこの無垢の博物館、本の最初に地図があってその通りに実在しているそうです。

作品のなかで博物館についての描写を読むと、本当に行ってみたくなります。

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この記事を書いた人

† 黒本 未莉 くろもとみり †


† 1982年 東京生まれ  


† 高校中退の元書店員、現在は夫と二人暮らし。
 
 本が好き。

 読書の魅力を、自分の言葉で伝えていきたい。

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