今回の作品は、文庫で600ページ超えの大作でしたがそんな長さを感じさせない読み応えのある歴史ミステリ、薔薇密室をご紹介します。
読んだ感想

物語を必要とするのは、不幸な人間だ。
薔薇密室より抜粋
こんなページから始まる物語。
実際、私は小説や映画や漫画がなければ生きてゆけない人間なので、この言葉にギクリとしながらも、冒頭の一文でもう既に薔薇密室に引き込まれました。
巻末の解説に、この一文のことが書いてあるので読み終えたあとにまた見ると、なるほどなと思いました。

解説まで読むことをオススメします。
物語の内容は、第一次世界大戦中のドイツ・ポーランドが舞台で、薔薇の僧院と呼ばれる秘密めいたその場所では人間と薔薇を融合させる実験がされていた。
その薔薇の僧院での日々、耽美なモノ好きにはたまらない場面が多く、魅了された。
語り手が変わって、戦争から逃れたポーランドの少女のはなしは、戦時下の描写もあって胸が苦しくなりました。
敵でありながら美しい男性に惹かれてしまう、そんなどうしようもない心理は共感できる。
歴史ミステリの要素も盛り込まれていて、最後まで飽きずに読み進めることができました。
薔薇の若者


この物語に出てくるキーワード、薔薇と融合させられてしまった人間の存在だ。
美しい人を、自分のものにしたい。その欲望を薔薇と融合させることで、薔薇の若者となる・・・。
私は跪いて彼の美を崇めるけれど、その行為の虚しさを知りもする。
薔薇密室 57ページより抜粋
この美に対する渇望は、とても理解できる。私がとても共感したところです。
小説の最初の部分は、薔薇の僧院の話で、物語が進むにつれてあの最初の話は一体なんなのか?と、なる。
誰の物語なのか、語り手が変わっていくなかで、最後には物語はひとつにまとまっていく。
ミステリのギミックもさることながら、こんな物語を書ける皆川先生はやっぱり凄い!の一言に尽きます。
おわりに
ナチス・ドイツについての描写も時代背景的にあって、こんな時代だったのかと思うのと同時に、他にもこの時代を描いた作品はたくさんあると思うので、読んでみたくなりました。
皆川作品では、この薔薇密室と似たテーマで書かれた作品があります。
皆川作品、他にも色々あります。
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