シェイクスピア作品はとても沢山ありますが、中でも有名な四大悲劇と言われる「ハムレット」「オセロー」「マクベス」「リア王の悲劇」と、
誰でも名前くらいは聞いたことがあると思われる、「ロミオとジュリエット」を紹介します。
私が今回読んだ本は、角川文庫の新訳版です。訳者の河合祥一郎氏は気鋭のシェイクスピア研究者の一人ということで、解説も充実していてシェイクスピア初心者にもわかりやすくおすすめです。表紙も、金子國義の絵画カバーになっていてオシャレです。
ロミオとジュリエットを読んだ感想
あらすじ
ああ、ロミオ、ロミオ、どうしてあなたはロミオなの。 新訳ロミオとジュリエット 51ページより抜粋
上記のセリフはあまりにも有名すぎる、このロミオとジュリエットのストーリーを知らなかった私でもどこかで聞いた憶えのあるものでした。
ただこのセリフだけを知っていたというか、どんな場面で言われたセリフなのかまでは、実際に読んでみるまでわかりませんでした。そして読んではじめて「そういうことだったのか!」と、一気に理解できたのです。
このセリフはジュリエットのロミオに対する切実な心の叫びなのですが、この一言にすべてが詰まっているような、そんな印象深いキラーワードだと思います。
だからこそ私はあえてこの使い古された(と言っても過言ではない)セリフを軸に、この作品をオススメしたいのです。
ロミオとジュリエットは一言でいえば許されない恋です。そういった物語は数あれど、この二人の運命が辿る悲劇のストーリー展開は、今の時代に読んでも実に面白いのです。
そこがシェイクスピアの凄さなのか・・・と、素人ながらも思わず唸ってしまいました。
そうは言っても、有名すぎて今さら読む気がしないなあ・・・
なんて思ってるそこのあなた、そんなあなたにこそ新訳版で現代に甦った物語を堪能してもらいたいです。この新訳版のロミオとジュリエットは比較的注釈も少なく、ストーリーに没頭できるはずです。
訳者あとがきでは詳しい解説の他に、訳者本人の著書で関連本が紹介されています。そちらを読めばより一層シェイクスピアの世界を知ることができると思います。
シェイクスピアの劇的手法についての本はこちらです
ハムレットを読んだ感想
あらすじ
有名すぎて読んだ気になっていました・・・。知っている名台詞やキャラクターも、ストーリーありきなのだと改めて実感しました。名作といわれ何百年も受け継がれている理由がわかって良かったです。いつか、ハムレットを舞台で観てみたいと思いました。
四大悲劇の中でタイトルだけは知っていた作品。こちらもロミオとジュリエット同様、名台詞だけがひとり歩きしていて、内容を全く知りませんでした。この物語は、ハムレットのキャラクターが立っていてすんなりとストーリーに入りこむことができました。
王子であるハムレットは父を殺され、荒んでゆく姿や気の触れたふりをする姿が人間らしく描かれていて読みやすかった。心の迷いなどもキャラクターを引き立たせる要素になっています。
印象に残った、ハムレットのセリフがあります。
ああ、神よ!神よ!この世のありとあらゆるものが、この俺にはなんと疎ましく、腐った、つまらぬ、くだらないものに見えることか!赦せん、ああ、赦せない。この世は、荒れ果てて雑草ばかり生い茂った庭。けがらわしいものだけがはびこって悪臭を放つ。
新訳ハムレット 24ページより抜粋
こんな気持ちを抱えた状態でハムレットは殺された父の亡霊に出合います。
この世の箍が外れてしまった。なんという因果だ、俺が生まれてきたのは、それを正すためだったのか。
新訳ハムレット 55ページより抜粋
そしてハムレットの悲劇は始まってしまうのです。
劇的なストーリーは結末まで目が離せませんし、読み応えがあります。主人公だけでなく、他の登場人物も魅力的に描かれていて中でも美しい娘のオフィーリアが印象的でした。
とても美しい、そして引き込まれる絵画で、ハムレットの内容を知った上で見ると心が揺すぶられます・・・。
絵画についての本もあります。
訳者あとがきでは、ハムレットにおける名台詞「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ。」の翻訳の歴史を紐解いています。これまでに訳されたいろんな文言が掲載されていて、翻訳の奥深さを感じることができて良かったです。この文言を見ているだけでもとても面白く、興味深いです。
あとがきで紹介されていた、ハムレットについての詳細本はこちらです。
新訳版著者のハムレット関連本はこちらです。
あとがきまで、読み応え満載でした!
マクベスを読んだ感想
あらすじ
ストーリーはテンポよく進みますが、よくある歴史上の悲劇の物語に感じて自分の中に入ってこなかったのが残念です。ただ、シェイクスピア独特の台詞回しや作中の言葉にはやはり特別なものがあると感じました。解説でハムレットと比較されるので、先にハムレットを読むべきだと思います。
「ハムレット」で展開した 思考から行動へ の哲学的思索を発展させ、人は運命や自然を超えることができるのかという主題を掘り下げた劇となっている。 訳者あとがきより抜粋
この点をふまえてから読むと、理解が深まるストーリーです。しかしながら個人的には、四大悲劇の中で一番よくわからなかった作品であります・・・。と言うのも、この作品はあとがきによると、当時新たなパトロンとなった国王を楽しませるために書かれたとのことで、そういう風合いが色濃く出ている作品でした。
私の中でこのストーリーの見どころは、主人公のマクベスよりマクベス夫人のほうがキャラが立っていて、徐々に精神が壊れてゆく姿は見ものです。
シェイクスピアらしいキラーワードもでてきますし、150ページくらいで読めるので、サクっとシェイクスピアの世界に浸れると思います。
マクベスについての詳細本はこちらです。
オセローを読んだ感想
あらすじ
誤解が誤解を生み、それによって引き起こされる悲劇に陥る物語のオセローは、現代のドラマでもあり得るテーマでとても面白かったです。嫉妬や強迫観念という人々が抱える様々な感情が、シェイクスピア劇で鮮やかに展開されています。
この物語は本当に今の時代に読んでも楽しめる人間ドラマです。たった一枚のハンカチがこれほどまでに登場人物たちの心を乱していく・・・
時代が変わっても、男と女の寝盗られ話は変わらずにあるものなのだなと、しみじみ感じました(笑)
それに加えてシェイクスピアの作った台詞ひとつで、ドラマは劇的に面白くなっています。
エリザベス朝時代の独特の考え方や人々の生き方などを理解すると、より楽しめると思います。
エリザベス朝時代に関する本はこちらです。
シェイクスピア批評に多大な影響を与えた本はこちらです。
リア王の悲劇を読んだ感想
あらすじ
四大悲劇のなかで最も悲劇的と言われる作品ですが、たしかにその通りで人生の教訓めいたものを感じられる物語でした。このお話には元ネタがあるのに驚きましたが、それに加えて主人公のストーリー以外のサブストーリーが濃厚なのにも驚かされました。
一番共感できて印象に残ったキャラクターは、リア王の娘、三女のコーディーリアです。彼女の心の声がすべてを物語っているように感じました。
コーディーリアは何と言おう?愛して黙っていよう。(中略)ならば、哀れなコーディーリア。いえ、そうじゃない。だって私の愛は、この舌よりももっと重いのだもの。
新訳 リア王の悲劇 10ページ11ページより抜粋
本来計れるはずのない愛情の深さを、計ろうとする人間の愚かさ・・・。そんな人間の辿る末路には、考えさせられるものがあります。
巻末には詳細な注釈と、元ネタに関する解説も充実していてとても勉強になりました。注釈によると、シェイクスピアに影響を与えた人物として古代ギリシャのストア哲学者エピクテートスとあって、そのへんも興味深いなあと思いました。
エピクテートスの本はこちらです。
リア王の関連本はこちらです。
まとめ
シェイクスピアは、色んな小説(とりわけイギリス文学)に引用されているので、気になっていました。読んでみるとその作品の面白さだったり、独特の台詞だったりを堪能できました。そして何より嬉しいのは、今まで引用されていてもよくわからなかったことが、このセリフ知ってる!となって、他の小説を読む楽しさも広がっていったことです。
新訳版で、古典の面白さを実感できると思います。ちなみにこの四大悲劇は、ここで紹介した順番で読むことをオススメします。
- ハムレット
- マクベス
- オセロー
- リア王の悲劇
私は違う順番で読んでしまったので、改めてこの順番で読めばよかったと痛感しています・・・。
さて最後に、シェイクスピアには関連本が多数あります。今回は新訳版の著者の本を紹介します。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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コメント
コメント一覧 (2件)
黒ミリさん、こんにちは。紹介の仕方がとても魅力的ですね。シェイクスピアはもういいか、と思っていたのですが、また読みたくなりました。
私の場合、四大悲劇に順位をつけるとすれば
ハムレットーマクベスーリア王―オセロとなります。
またいろいろ紹介してくださいね。
ありがとうございます。そう言ってもらえると、とても嬉しいですし励みになります。