オランダの作家であり詩人であり医師でもある(すごい!)トーン・テレヘンの本は、すごくかわいい表紙に惹かれて買いました。
人間は一切出てこない大人向けの童話で、ユーモアあり哲学的な表現もありの、オランダでもっとも敬愛されている作家の作品です。
この本は2冊とも本屋大賞翻訳小説部門を受賞していて、元書店員の私としてもとても納得のいく作品であります。
本屋大賞とは、全国の書店員さんが選ぶいちばん売りたい本のことです!
帯にはあの有名な日本を代表する詩人の谷川俊太郎さん絶賛の深い孤独によりそう本とあって、これは…!と思い手にとりました。
テレヘンさんが書くとコトバも生きものになる、ハリネズミの孤独が私たちの孤独になる。
谷川俊太郎
この本はこんな人にオススメ
- 一人でいることが比較的多く、それを好む傾向にある人
- 哲学的に物事を捉えることが好きな人
- 友達が少ない人、もしくはいない人
- 自分自身と心の中で対話している人(いるかどうかはさておき)
- 長くて重たい小説を、今は読みたくない人
- ほっこりしたい人
- 何か読みたいけど、何を読んだらいいかわからなくなっている読書迷子さん(こんな名称で合っているかわかりませんが)
- 人間社会に疲れている人
- 自分に自信がなくて臆病な人
- 友達が欲しい人、もしくは友達の作り方がわからない人
私は読んだあと、友達の作り方について考えたくなりました。
ハリネズミの願い
私はこのお話に出てくるハリネズミに自分自身を重ねあわせて読んで、普段は普通の人物が登場する小説を読んでいますが、こんなに動物に感情移入するとは思いませんでした。
特にストーリーが大展開するわけではなく、ハリネズミの妄想や想像、日常が繰り返されていくお話です。
親愛なるどうぶつたちへ
ぼくの家にあそびに来るよう、キミたちみんなを招待します。
……でも、だれも来なくてもだいじょうぶです。
ハリネズミの願い
この手紙をハリネズミが書くというところからお話が始まるのですが、この手紙に物語の全てが込められていると私は感じました。
なぜこんなにハリネズミに共感できるのか
自分に自信がなくて、一人でいるほうが楽だと思っている。
けれど、こんな自分と仲良くしてくれる人がいたらいいな。いるかな、本当に?でも私のことを知ったら嫌われてしまうのではないか…。
私はこのお話に勝手に自分の生活をあてはめて考えてみました。
するとなんともしっくりきてしまって共感が止まらなくなりました。
現代の人間社会に例えるとこんな感じ
すごく楽しそうにリプし合っているアカウント見にいく→
ハリネズミがもし人間だったらこんな感じかなと勝手に現代アレンジしてみましたが(笑)、読んだらこの雰囲気をお分かりいただけると思います。
本作品、ハリネズミの願いには決して人間は出てきませんのでこういう現代の世界観に疲れている人に、ぜひ読んでいただきたい作品です。
きげんのいいリス
こちらのお話もハリネズミの願いと作風は同じですが続編というのではなく、この作品がハリネズミの願いの原点となっています。
タイトルの通りこのお話の主人公はリスで、ハリネズミの願いのハリネズミとは全く違う性格なので、また違った物語を楽しむことができます。
ちなみにこのきげんのいいリスの中で出てくるハリネズミは、孤独なキャラクターではないのでそういう意味でも気分を変えて読める作品になっています。
挿し絵もとても可愛くて、小さな章で区切られているので気分転換に少しずつ読むのもオススメです。
普段こういった大人向けの童話を読まない方にも読んでいただきたい本です。
あなたの本棚の隙間に置いて、癒されたい時に手にとって、どうぶつたちに会いにいってください。
キリギリスのしあわせ
こちらの本は、「ハリネズミの願い」「きげんのいいリス」に続く第3弾の作品です。
作家本人がとても愛着のある作品だと言っている、親切で働きもののキリギリスのお話。
森のはずれの、川のほとりにある灌木の茂みに、キリギリスの店があった。
ショーウィンドウの窓には大きな文字で、こう書かれていた。
なんでもあります
(太陽と月と星以外)
キリギリスのしあわせ5ページより抜粋
冒頭の部分から、もうわくわくしてしまう。作者が楽しんで売り物を考えたことがわかる、時には哲学的な「絶望」や「時間」まで売っている。
小売業で接客を経験したことのある人なら共感できると思いますが、お客さんのニーズに100パーセント応えるのは不可能です。
それでもこのお話のキリギリスは、だれのことも失望させたくないのです。
何かしらのお店で働いている人や、現代社会に疲れた大人に、ぜひ読んでもらいたい一冊です。
私も、仕事に疲れたらまたこのお話を読んで癒やされたいと思います。
トーン・テレヘンの動物シリーズは、表紙も挿絵も可愛くて、物語も癒やされる作品なのでプレゼントにもいいと思います!
おじいさんに聞いた話
こちらの作品は、今まで紹介したどうぶつ物語の趣とは違う魅力のある、トーン・テレヘンの掌篇小説集となっています。
あまり明るくはない、そこかしこに憂いを感じられる、39編のおじいさんに聞いた話。
一つ一つのお話は短くまとめられていて、少しずつ読むのにもいいと思います。
訳者あとがきも含めて最後まで読むと、トーン・テレヘンの世界をたっぷり楽しめる、そんな作品です。
おわりに
今回紹介した作品で、おじいさんに聞いた話は、新潮クレスト・ブックスから出版されています。
私はここのシリーズが大好きで、他の作品もセンスのいいものばかりなのでこの出版社から海外文学作品を探すのもアリだと思います!
表紙もオシャレなので、本当におすすめです。
最後までお読み頂きありがとうございます。
自分の生き方について考えたくなる、海外文学の名作を紹介した記事はこちらです。
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